コラム1
105 リスクを取れる人が幸せになる
卵は一つのかごに盛るな
最近多くの企業で採用しつつある確定拠出年金の金融教育の中で必ず出てくる言葉である。卵を一つのかごの中に入れると、そのかごを落とせば全ての卵が割れてしまう。
投資対象を集中したところ期待が外れれば大きな損失を被ることになる。そのため卵をいくつかのかごに分けること、投資対象を分散させることで下落時のダメージを和らげることが出来る。
投資とは短期間の損得ではなく、生涯に渡り長期間継続することになるから将来のことは分からない。そのため投資対象を分散してどんな状態にも対処できるように考えた手法である。
投資家は大きな損得の変動を好まない「リスク回避者」の行動を取るといわれている。金融教育では投資対象の特徴を説明し、分散投資が組み立てられるように指導している。
リスク回避者の究極の選択は全てを元本確保型に投資することである。いわゆる定期預金タイプの金融商品に全てを投資するのである。これではあれこれ考えなくて済むし、元本が減らないことは何より安心であると思われる。
多少増えてもリーマンショック時のように 30%以上下落したら、老後の生活が成り立たない。パニックに陥り眠れない日々が続く。殖やすことより減らないことのほうを選択する人が圧倒的に多い。
リスクというと危険・損失などマイナスイメージが強く損失と同等の利得があることはあまり認識されない。
決定的なダメージを避けるためには分散投資は有効であるが、短期間で大きく増やしたい人には不向きである。投資資産が限られていれば、分割した資産が投資単位に見合わない場合もある。
ポジティブな人はリスクを恐れない
ポジティブシンキングは積極的思考と訳され、ネガティブシンキングは消極的思考と訳される。投資における分散投資はどちらかといえばネガティブシンキングの傾向がある。
リーマンショックは100年に一度の出来事といわれ、普段の想定をはるかに超える出来事だったといわれている。世界恐慌、バブル崩壊など歴史を振り替えれば経済の大暴落は何度もあった。
過熱しすぎた景気は一気に下落しまた上昇していくのが経済の循環である。
100年に一度の大暴落を恐れて投資から貯蓄へ切り替えてしまうと、99年間に渡る上昇のタイミングを逃してしまう。下落したときが仕込みの最良のタイミングだが、心に余裕がなければ更に下落するとしか思えない。
そもそも投資に向ける資金は緊急性を伴わない余裕資金で行われているはずだから、仮に 30%以上下落しても生活に大きな支障は及ばないはずである。拠出可能な資金があれば追加投入の絶好なタイミングとポジティブシンキングの人は考えるだろう。
過ぎた出来事、発生したことを悔やんでも新たに生まれるものは何一つない。(反省は今後に活きる)今出来ることは何かを考え行動を起こすのがポジティブシンキングの思考パターンであろう。この思考パターンは投資におけるものに限らず、日常の生活においても同様である。
サラリーマンにとって最大のリスクは会社の倒産、リストラリスクであろう。明日からの生活の糧を失うので何としても避けなければならない。まして子供の養育、住宅ローン等を抱えていれば多少の理不尽は辛抱しなければならない。
また定期的な人事異動が行われる中では、大きな成功を成し遂げるより大きな失敗をしないことが優先される。仕事において大きな成功と大きな失敗は表裏一体なので、このようなリスクの高い仕事を避ける傾向がある。
ポジティブシンキングで行動したくても守るべき家族と可愛い我が身を考えれば、新たなチャレンジを避け、出来るなら他の誰かに替わって欲しいと考えるだろう。
サラリーマンの全てがネガティブシンキングというわけではない。リスクを取り会社業績に大きく貢献した者が社長になるケースが多い。世の中に名前が知られている人は誰もが避けたがるリスクを取り、大きな成功に結びつけた人だと思われる。
出会いが多ければお金を引き寄せる
人との出会いが自分の人生を決定付けることは多い。それがパートナー、恩師、上司、先輩、同僚、取引先の担当者等であるかもしれない。
初めて会う人とは人間関係は全くない。面談の段階に至るまでに書面案内、メール、電話アポイント等のステップを踏まなければならない。会っても時間の無駄になるかもしれない、断りの連絡があるかもしれない、面倒くさいなどと考えたら最初の一歩が踏み出せない。
営業という職種はリスクを恐れていたら成り立たない。取引相手は現状に満足していれば、新たな商品やサービスを容易に受け入れようとはしない。受け入れの検討をするだけ煩わしさが増すだけである。
だから営業は断られることから始まる。何度となく断られることを繰り返しながら担当者と人間関係を築いていく。断られ続けると自分の人格を否定された思うこともある。それでも挫けずプレゼンテーションを成功させた者が成約にこぎ着けられる。
初めは猜疑心を抱いていた担当者が徐々に良き理解者に変わり、いつしか応援者に変わっていくことがある。成約に結びつけば売上向上は当然のことであり、さらに厳しいハードルを越えた自分に自信がつき誇らしく思える。
会社経営においてこれまでと同様の事業を継続しているだけでは売上の減少は免れない。新たな事業に着手しなければならないと分かっていてもどんな事業転換を図れば良いか分からない。
すでに先行している会社を参考にしようとすると、今更進出するのは遅すぎるのではないか、思ったほどの利益が得られなければ設備投資倒れになる、始めるならもっと早く着手すればよかったと着手する前に出来ない理由を挙げる。
仕方ないので現状の事業を継続して景気が良くなるのをじっと待つ方法を選択する。そのうちに幸運の女神が現れきっと救ってくれると信じて待っている。リスクを避け何もしなければ時代に取り残されやがて淘汰されてしまう。
パートナーとの出会いにおいて世の中に数多くいる男女が偶然結びついて一組のカップルとなった。
そこに至るまでには互いにいくつもの出会いがあったかも知れない。ライバルを押しのけ勇気を出した結果がお金には代えられない最高の幸福を得ることが出来る。
行動する前から行動しない理由を見つけることは簡単である。自分の人生は自分が主演で評論家ではない。勇気を持って行動した者だけが利得を得ることができる。
想定外の展開は面白い
空腹時は何を食べても満足することが出来る。食べ物があるだけで幸せを感じる。しかし、食べ物に困らなくなれば美味しくなければ満足しなくなる。人が幸せであり続けるには同じことの繰り返しでは飽きてしまい、変化することに新たな幸せを見つける。
推理小説では冒頭の殺人事件の犯人を探し始めるところが面白い。さらに意外な展開が加わると面白さは拡大す
る。映画にしても先の展開が見えてしまうと、急につまらなく感じられる。先の展開が分からない想定外の出来事のほうが興味を惹かれる。
小説や映画の出来事が現実のものとなったら面白いだけでは済まず、パニックに陥ったり、相当疲れることになろう。水戸黄門のように結末が分かっているほうが安心して見ていられる。
自分の人生の結末は誰にも分からないはずだ。もし知ることが出来たら残りの人生はつまらないものになる。おそらく自分の人生の結末は誰も知りたくはないだろう。
リスクは危険であり恐ろしいものと思い込みがあるが、人生にリスクはつきものであり、そのリスクを取ることで今以上に幸せを感じることがある。
長野日報土曜コラム 平成 27 年 5 月 23 日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄