コラム1
142 成りたい自分に成る
僕の夢、私の夢
2017年度日本FP協会で小学生を対象に集計した将来なりたい職業は、男子では1サッカー選手、2野球選手、3医師、4ゲーム制作、5建築士と続く。一方女子では1看護師、2パティシエ、3医師、4保育士、5デザイナーの順である。
リーマンショック後の不況期には公務員が男女共に上位に来ていたが、最近は好景気のせいか上位には見られない。またかつて見られなかったユーチューバーが職種と認められ上位に現れたのも時代の変化が感じられる。
子供たちは身近で見聞きできるところに夢を描く。大人から見れば収入や安定性や難易度などを考慮して描くが、子供たちの夢は純粋でストレートである。
かつて親が事業をしていれば後を継ぐのは当たり前と思われていた。長男では当然であり、男子がいない場合は長女が婿養子を招いて後を継いでいた。将来の夢を描けるのは次男や兄弟に男子がいる女子に限られていたかもしれない。
それでも全く自由に描けたわけではなく親の希望や思惑に左右されることは多かった。次男は家業に関連する職に就き、女子はやがて嫁いで主婦になることから今より教育が軽んじられていた。大学進学より茶道、華道など花嫁修業が優先された。
現在では例え長男でも親の後を継がないといっても許される。自分のやりたいことがあるなら、親はそれを成し遂げられるよう応援する。親は自分と同じ苦労を子に掛けさせたくないし、将来のことを考えると今の事業が次世代まで続けられる見通しが立たない。
子は子なりに夢を追いかけ、自分の思いを強制するほど親に自信がない。子の夢はそれがどんな思い付きから来ようとも無条件に受け入れ応援する。
アスリートは夢を応援する
夢をかなえるには既に夢をかなえた人の言葉は身にしみる。一流のアスリートを身近に感じられればスポーツに対する夢は一層強固になる。
「今日できないものは明日もできない。いつもそう思って毎日を大切にしていきたい。」三宅宏美(重量挙げ)
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」王貞治(野球)
「私、誰よりも練習してるよ。他の子が皆帰っても、ひとりで練習してるよ。」福原愛(卓球)
「最後は気持ちが強い人間が勝をとることができるんだなってつくづく実感しました。」上野由岐子(ソフトボール)
「痛い目にあったとしても、失敗すらできない人生よりずっと楽しい。」高橋尚子(マラソン)
「メンタルが変われば行動が変わる。」長友佑都(サッカー)
「やるかやらないかですよ、人生は。やればそれだけのものが返ってくるし、やらなければそのままですよ。なんにもない。」桑田真澄(野球)
子供のときに描いた夢を実現し、一流のアスリートになった人は厳しい練習をこなすと共にメンタルの重要性を語っている。どんなに素晴らしい技術を持っていてもそれを発揮しようと思わなければ、技術は活かされない。スポーツは心・技・体といわれるように3つが揃わなければ高いパフォーマンスは発揮されないということだろう。
落語の枕は真実だった
落語には本題に入る前に枕といって導入部分がある。時事ネタを入れたり持ちネタを入れたり噺家のオリジナリティが表れる。
二代目桂枝雀は古典落語を踏襲しつつ超人的努力と空前絶後の天才的センスを発揮し、客を大爆笑させていた。人気絶頂であったがうつ病を発症し59歳で自ら命を絶った。その桂枝雀の代表作品「崇徳院」の枕はオリジナリティが溢れ、何度聞いても笑いがこみ上げてくる。
「笑いというのは誠に身体に良いのでございます。何故かと申し上げますと、上を向いて笑うからです。笑っているときは息を吐きますが、吐きっ放しではいられず必ず息を吸います。笑いは深呼吸と同じ作用で横隔膜の上下作用、すなわち緊張と緩和が連動しますから身体に良く頭が働くのでございます。血の巡り血行が良くなり健康には誠の良いのでございます。
私の話が面白かろうとなかろうとご自身から自発的に笑っていただければよろしいのでございます。時々こういう間違いがあります。面白いことがあるから笑おうとは大きな間違いであります。誤った生活態度と言わなければなりません。
悲しいから泣く、面白いから笑うのは嘘やそうです。悲しくもないのに下を向いてしばらく泣き真似をしていれば本当に悲しくなり涙が出てきます。
笑いも同様でございます。面白いことがあったら笑うのは間違いでありまして、面白いことがあろうがなかろうが自分からまず笑う。そうすれば自然と私の話が面白くなってくるのです。順序は逆でないと嘘になります。互いの幸せのためによろしくご協力をお願いします。」
客は話を聞いて笑うものと思い込んでいるところに、自ら笑えと乱暴に聞こえるところに真実があるから笑わずにいられない。さらに自分の健康において身体的な健康に留まらず、笑いは心理的な健康に大きな役割を果たしている。
「笑う門には福来る」ということわざがあるが、いつもにこやかに笑っている人は好感がもたれやすく幸運を手にしやすい。また笑いの絶えない家庭は例え苦しいことがあっても家族の笑顔が落ち込みを押さえ前を向いた一歩を踏み出しやすい。
大人の夢
小学生の夢は身近で見聞きするところに夢を描く。夢の実現がどんなに難易度が高かろうが可能性がなかろうが描くだけで賞賛される。簡単に成れるものより相当の努力を必要とするほうが夢として好まれる。これらの夢が中学生、高校生になるにつれ徐々に現実化して手が届きやすくなる。
子供の夢は将来の職業を指すことが多い。仕事を通じてお金を稼ぎまた生きがいを得るのも仕事を通してである。それだけ仕事は生涯の夢の対象になりやすい。
一方大人の夢はなんだろうか。既に仕事に就いて何年も経つと子供のときに描いた夢さえ忘れている。子供のときの夢を実現した仕事に就いたとしても満足できない自分がいる。
おそらく夢に描いた仕事を通じて良好な人間関係が築けない、達成感が味わえない、満足感が得られなければ素直に喜べないだろう。
仕事を通した夢の実現は人間の欲求の充足に通じる。仕事からお金を稼いで衣食住を満たすこともあるが、人間社会の中で自己の確認や自己実現の達成がなければ深い充足は得られない。
大人になって自己研鑽をかねて新たな資格取得を目標にする人もいるが、多くの大人はいつまでも健康で家庭円満であれば良いと思うかもしれない。当たり前すぎてつまらないという意見もあろうが、夢は大きくて苦労しなければ取得できないものとは限らない。
趣味を充実させることでもよく、夢中になれることでも良く、人の役に立つことでも良く、気の合う仲間と楽しく時間を過ごすことでもよい。大人の夢は感覚的に日々気持ち良いと感じられるのが一番だと思う。金銭のために夢に制限を掛けるのはいかがなものか。
長野日報土曜コラム 平成30年6月23日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄