コラム1
29 FP ビジネス
FP に専属業務はない
ファイナンシャルプランナー(FP)の勉強を始めて、最初の関連法規にファイナンシャルプランニングと隣接する領域にはすでに専門家が存在し、その専門家について定めた法律があるので、それらの法律等に抵触しないよう気をつけなければならないとあります。
税理士法では税理士固有の業務として「税務代理」「税務書類作成」「税務相談」は税理士以外の者が行なうことはできません。税理士でないFPは税務に詳しくても、顧客が望んでも、有償無償に関らず税理士固有の業務に携わってはならないとされています。他にも弁護士、社会保険労務士等「士業」固有の業務に携わることはできません。
現在ファイナンシャルプランナーを規定する「FP法」というものはありません。FP6科目(ライフプランニング、リスク、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継)を学び、国家資格、日本FP協会資格を取得しても法律で規定する専属固有業務はないのです。
FPはサービスビジネス
FPの誕生の背景には生命保険の販売があると言われています。
生命保険は形のない商品であり、約款で内容を規定していますが、一般の方には理解し難いものです。また生命保険は病気で欲しい人には売り難く、健康で不要な人に勧めなければならない商品ですから、保険販売には相当の工夫が必要です。
そこでお客様が人生を無事に過ごすための備えであり、資産を上手に保全することに関連して生命保険の必要性を説くことで販売に結び付けようとしました。その後金融商品が複雑かつ多様化したので、個人が一括して資産を任せ、資産の保全を相談する相手としてFPが必要とされるようになりました。
多くのFPは企業に所属して商品を円滑に販売するための手段として捉えていると思われます。これではFPサービスはどんなに立派な情報提供でも商売にならず、取り扱う商品が売れて初めて商売になります。商品が売れなければFPサービス価値は企業にはありませんので、顧客のゴールには取り扱う商品の購入が備わった選択しかないのです。
手数料と報酬
国内における独立系のFPが少ないのはファイナンシャルプランニング業務だけでは商売にならないということでしょう。そのためFPは金融商品や保険などを販売して手数料収入を得ています。商品を販売するFPがいけない訳ではありませんが、手数料収入を優先すれば商品提供のためのファイナンシャルプランニングになりがちです。
手数料は証券会社、保険会社など商品提供会社から支払われるので、顧客にはその金額は分かりません。投資信託は購入時に手数料率の説明がありますが、保険商品は現在販売に伴う手数料率の開示は行なわれていません。顧客への提供サービスによる対価ではなく、購入された商品の多寡により手数料は決定されます。
一方FPに支払われる報酬は顧客のために調査、研究、資料作成、説明等に費やした時間と労働に対する対価といえるでしょう。他の専門家と異なり顧客本人の代理として手続きを行なうことは少ないので、情報提供と実行支援に止まり実行は直接顧客自身が行なうことになります。知らないことを知るという情報提供にお金を払うということが、まだまだ習慣として薄いので大きな報酬に結びつくことは難しいでしょう。
報酬金額はその金額が直接FPの手取りになります。提案をまとめるまでに多くの時間を要したとしても、それはFP自身の力不足だから自習にかかる部分は顧客の負担する部分ではないと言うこともできるでしょう。力のあるFPはわずか10分で答えが出ますが、力不足のFPは1週間かけても答えが出ないと言うことになるかもしれません。
力のあると思われるFPの答えはたまたま先日相談された内容と同様と判断して答えるならば、10分で答えが出ますが、果たして先日相談されたテーマと同じと判断して本当に良かったのでしょうか、もしかしたらFPの勝手な思い込みということはないでしょうか。期限内に一定の答えを出さなければなりませんが、FPとして顧客の課題にどれだけ真剣に取り組んだのかが問われるのです。
他の専門家の場合、報酬規定があり上限または下限金額を設定しています。実際には設定金額を下回る報酬で業務を行う場合もありますが、価格表は他の同業者でも同じという説得力と顧客に対するサービスが価格の上で一定の目安になります。FPの場合全国平均では1時間当たり5千円から1万円くらいが多く、平均値は1時間当り6,800円ですが、FP事業における報酬規定は現在ありません。
FP固有の業務が法律で決まっていないだけでなく、FP業務が多岐に渡っているために報酬規定等が決められないと思われます。またFPの認定は国家資格で1級、2級、3級となり、日本FP協会ではCFP、AFPとなっていますが、CFPでは認められるがAFPでは認められない業務というものはありませんし、報酬の差を規定するものはありません。提供されるサービスに顧客が応じて支払う金額が報酬額を決定する相対取引になっているのです。
資格取得はスタートライン
現在FP技能士として1,2,3級があり、日本FP協会にはAFP、CFPの資格が認定されています。どんな士業でも共通することですが、資格取得は事業を行なう上で必要条件ですが、十分条件ではありません。事業に携わった年数や相談件数など経験が評価される基準になるでしょう。
セミナー講演では平均値を使用する場合がありますが、個別相談では平均値は不要です。日常生活費が多すぎるから節約しなければならないという比較基準は実際には当てはまりません。本人が本当に必要とする支出金額の価値は他人には判断し難いということです。将来の夢や希望を叶えるために支出を削らなければならないと気付いた時に支出の見直しが実行されます。
顧客からの相談において、FP自身と同世代、同様な環境の相談者には自分の経験が参考になりますが、世代、環境が離れると、FP自身が未知のゾーンに入りますので、顧客とズレが生ずるかもしれません。
しかし、数多くの相談を経験する中で、世代や環境を越え相談者と共有する箇所が増えれば、相談者にとって満足できる提案になると思われます。経験は相談業務に限らず、人前で講演する場合、初めは原稿に一字一句記入しないと落ち着かないものです。そして一字一句間違えないように喋ろうとすればするほど聴衆には気持ちが伝わらず、つまらないものになりがちです。数多くの経験をすることによってやがて聴衆の表情やメモを取る姿まで見えるようになるものです。
FP ビジネスは気付きの提供
FPの業務は隣接する領域がすでに存在していますが、「お金」「資産管理」を生活者の立場でトータルに考えていくには最適な業務になるでしょう。学校教育では「お金」に関して学ぶことはありませんが、社会に入ってから一生お金と関わっていかなければなりません。
新聞やニュースに出てくるデータは一般的なケースが多く、個人に当てはまることばかりではありません。最近注目されているETFと言う金融商品がありますが、取得する前にポートフォリオを考えなければなりませんし、それ以前にご自身のライフプランを考えておいた方がよいでしょう。お金を基準に考えると損か得かの選択が行なわれがちです。選択によっては一時得のように思えても長期で考えれば損の場合もあります。
FPには常に多面的な考えが必要になり、顧客の現状と将来の方向を認識します。そのためには専門知識で顧客を圧倒するのではなく、顧客の声に耳を傾け声なきメッセージまで聞き取ることが最も重要と思われます。じっくり聞くことが出来て、顧客の課題を共有できれば自ずと答えは見えてくるはずです。
FPに専属固有の業務はなくても、FPの出来る業務は数多くあります。FPに何が出来るかの前に市場から何が求められているかを受け止めれば、やがて立派なビジネスに発展するでしょう。
長野日報土曜コラム平成21年1月24日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄