コラム1
77 仕事は要領
1 年の計は元旦にあり
今年の正月に初詣に出かけた方は多いだろうか。不景気であればあるほど初詣は賑わうといわれている。長引くデフレと賃金の下落、年々上昇する社会保障費、導入がほぼ決定した消費税など悩ましい課題ばかりを耳にする。
一方昨年末から円安と日本株高が顕著になり、明るい兆しも感じられる。どうやら現時点がこれまでの下落傾向から上昇傾向に変わる変局点かもしれない。
こんな時期ゆえ初詣での願事には拍手にも力が入る。賽銭を多少多くしても、数秒間願事を唱えたくらいでは叶うものではない。神様もわずかな時間では名前と顔を覚えるのが精一杯で、いちいち願事まで聞き取れないかもしれない。
だからといって何分間も神様を独り占めしていれば、後続の人から文句を言われる。行かないよりましかもしれないが、行ったからといって全ての人の願事が叶っているとは思えない。
一年の計は元旦にありといわれるが、元旦とは元日の朝のことである。これは一年の計画は年の初めである元旦に
立てるべきであり、物事を始めるにあたっては、最初にきちんとした計画を立てるのが大切だということである。
元旦に計画が出来上がっているためには、前年末に計画の素案がまとまっている必要がある。年末はクリスマスやら年賀状作成、お歳暮やらで年始の計画どころではない。紅白歌合戦を最後までみて、昨晩遅くに食べた年越しそばのせいで元日の朝は寝不足と胃もたれでさわやかな目覚めはない。
こんな状態で一年の計を考えることなどできるはずもない。思い浮かぶのは昨年同様、家内安全、無病息災、交通安全など常套句を並べるのが精一杯である。
何年か前から手帳に今年の目標を記入するようになった。その場で思っても時間が経てば忘れてしまう。
記録に残せばいくらかは達成できるかと思ったが、何年経っても同じ目標が達成できずに残っている。
ビジネスは長期、中期、短期計画を立てる
願いや目標を唱えたり書き出したくらいで達成できるはずはない。願いや目標を書き出すと叶えられるノートがあれば面白い。デスノートではなくドリームノートと呼ばれるかもしれない。
以前研修で学んだことことであるが、ビジネスでは事業計画を長期、中期、短期に分けて計画する。長期計画はおよそ10 年先の姿を想定し、中期計画は5 年先の姿に置き換え、短期計画は1,2 年先の姿を元に計画する。想定された将来の姿になるために現状の姿とのギャップを時系列に埋めていくのである。
企業では売上高や、利益率等が目標数値に上げられる。これを元にどの事業分野でいくらの売上を達成するかとブレークダウンしていく。
また作成された事業計画をどの部署がいつまでにどのようにしてどのレベルまで達成するか決めていく。
その際チーム構成、メンバー、人員規模等が決定され、人材募集を含め人員配置が決められる。また事業計画推進のため設備投資、広告宣伝を含めいくらで実行するか予算が立てられる。
これらの事業計画はある程度先が見通せる場合は有効であるが、現在のように外部環境が大きく変化する時代には、ひとつの事業計画だけでは立ち行かなくなることがある。
そのために想定できるケースをいくつか設定して複数の事業計画を作成する必要がある。それでも想定外事象は発生するので、変化した要因を取り込んで逐次計画の見直しが必要となる。
計画だけでは絵に描いた餅
人はこれまでと異なる考え方や方法には必ずといっていいほど抵抗する。慣れ親しんだ方法にこだわり、新たな方法を否定する。それも正面から否定するのではなく、失敗したらどうなるなどと評論家みたいに物言う者がいる。
チームがこのような意見に同調すれば、実行する前から計画は絵に描いた餅になってしまう。そのためチームの意識をひとつにまとめるためには、計画が達成された状態を誰もが鮮明に描けるようにしておくのが良いといわれる。
計画を発表し、チームの推進役であるリーダーはメンバーの上司である場合が多いので、つい威圧的な言動でチームをまとめようとしてしまう。計画が達成できたときの喜びをていねいに伝えないと、サイドブレーキを引いたまま車を発進することになるだろう。
計画が実行に移されれば、リーダーはメンバーの業務の進捗を行なう。予定通り進む業務もあれば、遅れる業務もでてくる。計画に対する進捗は、試験問題を採点する単なる採点者であっては簡単な問題を与えられた者の方が高得点を取れる。これまでにない新しい業務に取組もうとする者が貧乏くじを引いてしまう。
常に想定外が発生するしているので、障害の除去と達成できた際の喜びを鮮明に与え続けなければ、チームの士気は継続しない。
俺のあとについて来いタイプは自身が一杯状態であれば、想定外の事象を努力不足と勘違いして認められなくなる場合が出てくる。
要領がいい人
要領がいいというと手を抜いたり、人に取り入ったりすることがうまい人を指すこともあるが、処理の仕方がうまい、手際が良いという意味もある。
業務をチームで行なう場合でも一人で行う場合でも要領のいい人は、事業計画を立て、その計画に従ってこつこつと業務を進めていく。途中でくじけそうになっても達成できたときの状態を手に取るように描いてまっしぐらに進む。もしかしたら自身の欲求を満たすために常に興奮状態に身を置いているのかもしれない。
自分ひとりでは手に負えない場合は他人の力を借りる。ただ借りっぱなしではなく、自身が他人の力になる時は報酬がいくらならば手を貸すなどとケチな考えを持たず惜しみなく援助する。他人の力にはこれまでの経験とノウハウが詰まっているので、それを自身で身につけようとすれば莫大な時間と費用がかかることを知っている。
要領のいい人は受験の際にも力を発揮する。まずテキストの全体感をつかむのがうまい。がむしゃらにテキストの1 ページからじっくり時間をかけて読み込んでいくと、疲れて途中で投げ出してしまうか、時間切れで受験当日を迎えてしまうことがある。
要領のいい人はテキストの目次を繰り返し見ながら全体感をつかんでいく。さらにどのくらいの時間をかければ理解できるかを把握しようとする。さらにいつまでにどのくらいの時間をかければ、合格点が取れることを認識しているので、勉強に無駄やムラが生じなくなる。
受験勉強は合格することを目標にすれば、満点を取る必要はない。合格に達するまでの最小限の時間を有効に使えば目標は達成できる。学生時代に運動部に所属しながら難関大学に入学した者はまさに要領がいい人に違いない。
しかし、ビジネスでは目標は与えられない場合が多い。自身で描いて達成すべくアプローチしていく。そして途中でくじけても理由は後付で何とでもなる。
よく退路を断つとか窮地に追い込むとかいわれるが、瞬間的に力は発揮できても長続きはしない。継続的に力を発揮するには、楽しいことを夢見続けることだろう。
要領のいい人がいうには失敗は途中で投げ出すことである。想定外事象が発生し軌道修正しても継続することが成功に結びつくと信じている。
要領のいい人はちょっと先を見据えているようだ。他の人には大きな失敗に思えても将来の自身のゴールからすれば、良い経験と受け止めることができる。
これから計画を練り直して手帳に残っている課題を来年には消せるようにしたいものだ。
長野日報土曜コラム平成25年1月26日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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